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野生哲学──アメリカ・インディアンに学ぶ (講談社現代新書)
- 作者: 管啓次郎,小池桂一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/05/18
- メディア: 新書
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僕が「インディアン」と聞いて真っ先にイメージするのはジャームッシュの『デッドマン』の雰囲気だ。これはとてもありきたりだけれども幸福なことだと思う。
映画自体は「物語」としてはよくわからない、記憶の中でまとまった像を結ばない。ウィリアム・ブレイクの詩集もまともに読んだことがないのだし。
だけど、作中に登場するインディアンのノーバディが「タバコはあるか」と何度もブレイク(ジョニー・ディップ)に問いかけるエピソードがやけに忘れられない。
この『野生哲学』によれば、インディアンにとってタバコは、神々への捧げものであり、病を癒す力もあるし、また交渉のための合意を誓約するためにも吸われるということで、とても大事な植物だそうだ。
特に最後の「交渉のための合意を誓約する」という意味合いがなぜ生じてきたのかについて。その理由は著者の考えでは、1.タバコは煙を生じるものだからであり、また2.タバコは息を目に見えるするものだからだということ。この二つの特徴がタバコの霊性を生み出している。詳しく見ていこう。
まず1について。煙は地上と天空(太陽の住む聖性の世界)とを垂直に結ぶ「神」とのコミュニケーションツールだったといえる。このことを証明する文化事象というのはたくさんあるようだ。
たとえば日本の一揆の際の誓約書である起請文(連名して仲間を裏切らないことを誓う文)。この起請文は各自が署名した後でわざわざ燃やすのだそうだ。なぜなら、煙にすることで天空(神仏)にその志を誓うといった意味があったから。
次に2について。生者と死者との違いは、手っ取り早く言えば、心臓が鼓動しているか否かではなく、息をしているかしていないかという点だ。そのため、息というのは生命そのもの魂そのものとみなされてきた。だから、息を可視化するタバコという道具は、その息とともに、己の真実(魂)を具現化させる。だから、1と組み合わさると、タバコはその真実(魂)を天へと届けるものと考えられてきた。それゆえ、タバコは「交渉のための合意を誓約する」道具として重要視されてきたのだろうと。
特に2の点に、なるほどなあと思った次第。
上記のような発見がたくさんあって、貴重な読書体験でした。
- 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
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