コンビニ人間⭐️⭐️⭐️⭐️殺人出産⭐️⭐️⭐️

消滅世界や殺人出産収録の短編にでてくる男性とは根本的に異なるタイプのクソ野郎が登場して、脇でガヤガヤと陰険で、自傷行為の裏返しのような攻撃性を発揮し、主人公である女性に暴言をぶつけてくるのだが、そこはさすが村田沙耶香特有の壊れた女子である。意に介すことはなく、というかそもそも、その男のさもしさ、怨嗟自体が理解ができないといった体。
この男女のコミュニケーションは当然破綻しているのに、なぜか「利害」が一致して、世間的に見れば「同棲」という形に収まっている、それを、変わった男女のお似合いの「恋愛」「同棲」と囃し立てる周りの「常識人」たち。どちらもグロテスクこの上ない。
著者がこれまで描いてきた、男女共々清潔すぎるなどで成立していた「奇妙な結婚」や「奇妙な恋愛」。今回は、さらに強く捻れた関係性が描かれている。そこからは、ただただ破天荒で乾いた「笑い」が響いてくる。そしてなぜか、圧倒的な風通しの良さを感じる。

コンビニ人間

コンビニ人間

殺人出産 (講談社文庫)

殺人出産 (講談社文庫)