コンビニ人間⭐️⭐️⭐️⭐️殺人出産⭐️⭐️⭐️

消滅世界や殺人出産収録の短編にでてくる男性とは根本的に異なるタイプのクソ野郎が登場して、脇でガヤガヤと陰険で、自傷行為の裏返しのような攻撃性を発揮し、主人公である女性に暴言をぶつけてくるのだが、そこはさすが村田沙耶香特有の壊れた女子である。意に介すことはなく、というかそもそも、その男のさもしさ、怨嗟自体が理解ができないといった体。
この男女のコミュニケーションは当然破綻しているのに、なぜか「利害」が一致して、世間的に見れば「同棲」という形に収まっている、それを、変わった男女のお似合いの「恋愛」「同棲」と囃し立てる周りの「常識人」たち。どちらもグロテスクこの上ない。
著者がこれまで描いてきた、男女共々清潔すぎるなどで成立していた「奇妙な結婚」や「奇妙な恋愛」。今回は、さらに強く捻れた関係性が描かれている。そこからは、ただただ破天荒で乾いた「笑い」が響いてくる。そしてなぜか、圧倒的な風通しの良さを感じる。

コンビニ人間

コンビニ人間

殺人出産 (講談社文庫)

殺人出産 (講談社文庫)

⭐️⭐️⭐️

やはり美少女ゲーム的。
それらゲームで、一つのチャプターをクリアすると、現れるご褒美CGのように、RADWIMPSの歌に従属的にして、おたくの欲望そのままな映像が垂れ流される。ストーリーが弛緩しそうなとき、間欠的に、ドーピングのように、テンション維持するため、そのようなシーンがインサートされる。なんだかやはり特殊である。
秒速・・・しかちゃんとみたことがないが、確かに、山崎まさよしの主題歌のような、過去に囚われるリグレットフルで沈鬱な雰囲気は、RADにより払拭され、これまでにない爽やかさを獲得しえているが、組紐的な運命論的妄想が炸裂しているところは、おたく的心性が濃厚に反映されているようでもあるのだ。
歌垣(デュエット的掛け合い)、「思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを」の小野小町的発想や、誰ぞ彼といった古語、それら日本文化への偏愛をちりばめつつも、神社の描写については、かなり、サブカル意匠の域をでない。まあ、その軽さがいいのか。
あと、どうでもいいが、口噛酒だと、きたねえなっ!と日本の憲兵が切れて、酒を放って、それに対し、台湾高山系原住民が怒り、首刈りを行った霧社事件を描いたのはセデックバレだったが、どうもそういう首刈りもののほうが私は好きなようである。

しかく◽️⭐️⭐️⭐️⭐️

いつのまにか読み終えていた。著者の小説のなかで一番映画的だと感じた。歯科医院の場面とか、カニバリスト集団が人々を拉致し晩餐に供しているシーンがものすごい。ラストシーンがよい。

□ しかく

□ しかく

ザ・ベイ⭐️⭐️⭐️

基本的にジョーズと同じような話。
町長などが無能なのはわかるけど、それって町長に判断任せるの?というレベルでアメリカの地方自治の様態がわからない。
よくできていると思う。