フォースの覚醒⭐️⭐️⭐️⭐️

ジェダイは神話だと思っていた、という地点から新たに物語(サーガ)を紡ぎ出すこと。それは、少年時代にSWに熱狂した世代が、メガホンを取りシリーズ最新作を撮ること、それ自体のメタファーだろう。かつて見たジェダイたちのように流麗にライトセーバーを使いこなせるものがこの映画では皆無。皆どこかおぼつかない。敵ですらそうなのだ。おぼつかないながら、それでも必死にして歴史をなぞってみる、そんな風情すらある。そうそう、なんというか、シリーズのなかで、今作が一番登場人物に必死感があるというか、一番泥まみれになっている雰囲気があるというか。どこか、勝っても、敗れて死にゆく瞬間ですら涼しさを纏っていたジェダイの騎士たちとは対照的である(そもそもフォースと共にあれば、死は恐れるに足りない、ということか。)。
JJはルーカスに比べかなり自意識系というか、エモーショナルな語りから醸し出される効果をフックにして、ストーリーを操舵するタイプの監督だと思う。応答が、非常に抽象度が高いというか。いきなり変なところから、天の声が聞こえてきて、それに身を賭して応答しなければいけない、みたいなシュチュエーションが多い。これって世界系なのかな。
他方で、ルーカス監督は、エモから隔絶しているというかそんな印象があり、今回のSWの映像にも、それが如実に出ていたと思う。

偽詩人の世にも奇妙な栄光⭐️⭐️⭐️⭐️

非常におもしろい。前半が特に。中原中也の詩に出会うころの叙述の妙。後半は、私たちが口にする言葉は、すべてなんらかのものの引用にすぎない、といった、耳タコの普通のことしか書かれていないような気がしたが、他方詩人ではなく、詩そのものになるというのはどういうことか、なぜ「からっぽ」性は「翻訳」という変流器を通すことで「偽」ながらも「詩人」になり得たのか、言葉を書き留めることができたのか、というテーマの方が興味を引く。というか、本来主眼はそこであり、掘り下げて理解仕切れていない自分が居るだけである。

偽詩人の世にも奇妙な栄光

偽詩人の世にも奇妙な栄光

岸辺の旅⭐️⭐️⭐️⭐️

生体を素粒子とかのレベルまで分解して飛散させてしまうような、まるでそんな風が、この映画の中では吹いているようなので、「死」の過程はそれほど重要ではなく、「死者」といわれるものもふと立ち現れるし、そしてまたふとしたきっかけで消えてしまうのだろう。『回路』であの世に憑かれた人が、するっとあちら側へ行けてしまうように。

ブンミおじさんの森⭐️⭐️⭐️

だらだらと見たらなんだかわからないぞ、この映画。
タイ版「山の人生」?
ナマズと姫の交接シーンは、とてもよかった。
共産主義の防波堤タイにおける戦場の記憶=カルマと輪廻思想とアニミズムの放流。

私の恋人⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

ナチスの収容所で絶命した2人目の私であるユダヤ人ハインリヒ・ケプラーが、迫り来る死期を前に、看守を「私の恋人」と幻視し、「行き止まりの人類の旅」のありうべき3周目について語り出すシーンは間違いなくこの小説のクライマックスだが、そこで語られる(超)倫理性は、間違いなく小説でしか表現できない類のコトバだ。

私の恋人

私の恋人

ニッポンの音楽⭐️⭐️⭐️⭐️

Jポップの歴史を70年代から10年代のディケイドそれぞれを代表するリスナー型音楽家にフューチャーして辿ったもの。非常に勉強になる。

グリーンインフェルノ⭐️⭐️⭐️⭐️

先進国で安穏な日々を送る大学生の実存は、いわゆる「意識高い系」と「自堕落」という二項対立からいかにして抜け出し、そして、どのように世界をまなざすべきなのか。
清濁合わせ呑む、という態度のうち、どこまでが許され、どこからが許されるべきではないか。
本作は、このような問いと同時にうら若きの複数の身体を、乱暴に、食人族や黒ヒョウの現前に投げ込む。無慈悲な遊びであり、思考実験である。
って、そんな立派な映画じゃないだお!!アホだお!!