おもしろかった。津村さんの小説はなんだかその質感として読み返したくなるもので、『ポトスライムの舟』も3回くらい読んだ。
 以下『ワーカーズ・ダイジェスト』の本筋とはあまり関係のないようなところから引用。

「年食うと、いろんな常識を体が感受するようになってくるのがわかります。炭酸飲んだら疲れ取れるとか、カフェイン摂ったら目が覚めるとか、甘いもんが口に入ったらもうちょいがんばれるとか、しょうが食べたらあったまるとか、ほうれん草とかニラを食べたら貧血が起こりにくくなるとか」
 「ああ、ああ、わからんかったことですよね、昔は。ほんと好き勝手やってた」佐藤氏は、最後の一口を食べ終わり、水を飲んでナプキンで口元を拭う。「なんやろ、そういうことがわかるようになって良かったなあとも思うけど、やっぱそれは、限界が見えてきてるから、体が自衛してるってことなんかとも思います。寂しい話やけど」(p38~39)

 32歳同士の会話だけどわかる気がする。まあ大学生くらいまでは、もうほんとカフェイン飲んで即爆睡とかしてたから、世間で言われるような常識に体が沿ってなかったんだけど、最近はちょっと沿ってきたというかそんな感じがしてうれしい。これだったのねっていう驚き。初めて導師の教えが現実感をもって会得できたときのようなうれしさ。んだけれど、もちろん寂しい気がする。
 

ワーカーズ・ダイジェスト

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