隠し砦の三悪人⭐️⭐️⭐️⭐️

大平、又七は、武士には面従腹背で相対することはもちろんのこと、ときには金のために、同じ村の朋輩同士、互いに互いを裏切り、出し抜くことも辞さない。しかし、状況が不利になれば、というか、状況が不利にならないことはないのだが、そうなった場合は一転、悪かった、許しておくれ、と相手に泣きつく。みっともないことこの上ない。
三船敏郎演じる侍真壁六郎太は、そんな2人とは対照的に、秋月家再興という頑とした存在理由があるので、その足場は揺るぎがない。だから、大平、又七のトリックスターコンビを上手く飼いならすことができる。一方でしれっと操り、他方でやすやすと操られる、そんなシーンの連続がまた楽しい。
六郎太に出し抜かれるのは何も大平、又七だけではない。例えば関所破りのシーンでは、敵方の武人の前であえて金をちらつかせ奪わせ、返せ、褒美をよこせ、と強欲な百姓を装うことで、結果ピンチを乗り切っている。本当に欲に溺れてものが見えていないのはどちらか、という、痛快な場面である。また、火祭りでは薪に隠された金を惜しげも無く火に焼べる。思い切りがいいことこのうえない。侍大将とはこうでなくてはいけない。
雪姫は、六郎太の補佐のもと、唖の木こり、炭焼きに扮して国越えをする。身分差を軽々と越境し、そんな旅をどこかで楽しむ余裕すら見せながら。これは、貴種流離譚において帰還する王が必ず有する稀有な偉大さではないか。