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『ブリングリング』を見た。これは、同じくソフィア・コッポラ監督の『ロスト・イン・トランスレーション』の前日潭のような気がする。
『ロスト・イン・・・』は、大学を卒業してすぐにセレブ写真家と結婚し、仕事で世界を飛びまわる夫に付いていくのだけれど、実際には、言葉も通じない他所の国のホテルの一室で、夫が仕事のあいだ中、半ば軟禁状態になり、孤独を募らせる女子が主人公の話だった。
他方、『ブリングリング』は、パリス・ヒルトンなどのセレブの家に忍び込んではブランド品を何点かくすね、それを身につけて街を闊歩したり、SNSに着飾った姿を投稿するティーンエイジャー窃盗団の話だ。
そして、どちらの若者(たち)も、キラキラした世界に憧れて、ちょっとそんな世界を覗いてみれる所にいるのに、それでいて満たされない、という点で共通している。
なぜ、彼/彼女たちは、一見くだらない、子供染みた欲望に緊縛されているのだろうか。『ロスト・イン・・・』の、セレブ相手のファッション誌向け写真家という、いわば「ブランド」に飛びついて早すぎる結婚をしてしまったシャーロット。『ブリングリング』で、初めてできた女友達に嫌われたくない一心から、その子と一緒にセレブの邸宅で盗みを働き、ズルズルと抜け出せなくなってしまうマーク。
心の満たされなさを埋めるために、若干不本意な選択してしまった若者への、厳しくも寄り添うような視線が、ソフィア・コッポラの映画にはいつも溢れている。
結局は窃盗罪で実刑判決を受けた『ブリングリング』のマークが、刑務所で見上げる空の先にあったものは、一生この満たされなさを抱えていくしかない、という諦観のようなものではなかったか。この映画は、そういうふうに折り合いを付けるに至るまでの、マークの悲哀に満ちた青春時代の記録なのではないかと思う。
エンディング・テーマもよし。
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