座頭市 地獄旅⭐️⭐️⭐️

丁半の賭場で、座頭市がいつものいたずらを仕込むシーンは、何度見てもニヤニヤ、ドキドキしてしまうのである。
今しがた部屋を出た座頭市と、畳に横になる十文字糾が、襖を一枚挟んで、背中で相手の殺気を探り、お互いの最初の一振り、その太刀先を制しようと意識を集中しているシーンや、座頭市が葦原で複数の刺客に囲まれながら、水の音を頼りに敵を切り倒す殺陣シーンはとてもすばらしい。キセルの灰を飛ばして攻撃するなんてアイディアも楽しい。
ただ、恋慕余って座頭市の手を噛むという振る舞いにはハッとさせられるものがあるものの、会話の途中から、すれっからしっぽくなっていくお種はなんだか悲しいな。
十文字糾が、仇討ちされるきっかけとなった事件が「将棋で口論になって殺した」みたいに語られるだけで、その経緯は結局謎に包まれたままなので、殺さざるを得ないもっともな理由が実はあったのではないと、この男を非道だと思いきれないところもある。ただ、死を覚悟している感じはプンプン出ていた。
最後、将棋を空で打ちながら、将棋では座頭市が追い詰められているものの、そこから座頭市が、手のひらの上の仇討ち一行の従者殺しの証拠を見せ、一気に剣を交えるまでの演出も流石である。