ナイトクローラー⭐️⭐️⭐️

題名は、事件や事故報道のスクープを専門にしている映像パパラッチの通称。センセーショナルで血みどろの惨事の現場に警察と先を争って駆けつけ、そこで撮った映像をテレビ局に高値で売りつけることを生業にしている人々のこと。

現実と世の中こうあってほしい、という人々の願望が相互浸潤する場、それが報道であり、テレビなのだ‥‥。劇中の挿話にあるように、キャスター席背後の書き割りに過ぎない画が、映像を通すとLAの摩天楼を俯瞰したリアルな風景として見えるのと同じで、テレビは真実を伝えているとは限らない。実はそれはフェイクかもしれない。
この映画に登場するテレビ局は、メーンの視聴者である白人郊外居住民に媚び、彼らにウケるニュースばかりを報じている。それは「マイノリティの都市犯罪」に脅かされる白人マジョリティ、といった自己イメージや世界観を補強する情報群である。
批判性や他者性を全く欠いたメディアと視聴者の蜜月。主人公ブルームはその両者を媒介し人々の、LAという街の願望を映像化していく。そして徐々に徐々に、ブルームのやり口は現実介入的になり、度を越していく。ここにおいて、リアルとは、見たいものを編み出すための素材(テクスト)でしかない。
メディアにおけるブルーム的ものの跋扈は今後も続いていくだろうことが皮肉たっぷりに語られるラストシーンにおいて、さながらブルームたちはマジョリティの微睡を守るガーディアンのようである。
ブルームの狂気が、警察、テレビ局のディレクター、カチーノと思われる部下三者とのコミュニケーションそれぞれで見事に炸裂しており、こいつのイカれっぷりは全く容赦ない。