イングロリアス・バスターズ

 アメリカ軍のアルド・レイン中佐はユダヤアメリカ人ら8人を率いてドイツ軍占領下のパリに潜入。彼らはナチからバスターズと呼ばれ恐れられていた。バスターズに遭遇して生き延びたナチは少ないが、生き延びた者はみな共通して額にレイン中佐の手でかぎ十字を刻まれていた。その傷には、そのかっちょいい軍服を脱いでも、ナチであることが一目でわかるようにとの意味が込められているのだ。
 一方、ナチにより目の前で家族を惨殺されたユダヤ人の少女ショシャナは名を変えてパリに逃げ延び映画館を経営しながら潜伏生活を続けていた。そんな彼女を街角で偶然見かけたドイツの戦争の英雄君。彼がショシャナに一目ぼれしてしまったことで彼女の運命が再び動き出すことに。というのも、宣伝相ゲッペルスによるプロパガンダ映画最新作『国家の誇り』の主演がこの英雄君で、そのプレミア上映が目前に迫っていたのであるが、その会場が主演の英雄君の意向により急きょショシュナの映画館で行われることになったのだ。そこにはナチ中枢のお歴々だけにとどまらずなんとあのヒューラー、アドルフも出席するということになったからさあ大変。
 ショシュナは、可燃性フィルムに点火し、ナチを劇場ごと焼きつくす計画を立て、一方でレイン中佐率いるバスターズは“プレミア大作戦”と銘打った、あまり計画性のない劇場でのナチの皆殺しを決行することを目論んでいた。バスターズのこの動きにいち早く気づいたのは”ユダヤ・ハンター”の異名を誇るランダ大佐。彼はショシャナの家族を殺した張本人でもある。さて、プレミア上映はどのような顛末を迎えるのか?
 バスターズは8人と書きましたが、8というこの数字は無意味です。最後に生き残っているのは何人なのか不明ですし、生き残っているバスターズもそのことに無頓着。こいつらマジで残虐。
 ショシャナがプレミア上映に備え赤いドレスで正装し、そして撃たれて死ぬシーン、ショシャナの恋人の黒人がフィルムに火をつけるシーン、煙に巨大な顔が映るシーンは素晴らしいなあ。ブラッド・ピットもイタリア人に扮してプレミア上映に登場するんだけれども、口を「ムンッ」て感じにずーっとしていて、なんだか額に鉤十字刻む以外のことに関しては相当に「鈍い人」に見えてよかった。役柄として得をしているのはヴァルツのほうで、タランティーノ的な画面でも第一章の印象があるからいいのですが、ブラピの扱いは第二章から登場ということで、まるまるジョーク。