『28週後』

 ダニー・ボイルの映画は意識的に見たことがありません。にもかかわらず断言してしまいますが、この人はスピードに囚われており、そのため「走るゾンビ」という愚の骨頂を犯してしまったのです。ゾンビの後頭部あたりにカメラがあるような感じで、ドキュメンタリーっぽい撮影手法でそのスピード感=恐怖感を演出していますが、そもそもスピード感=恐怖感という等式が、ゾンビ映画においては決定的に間違いなのではないか?
 本作は系統的には『バイオハザード』的なアクション映画。感染者への対処をめぐるマキャベリズム批判(感染拡大を防ぐために無辜の市民を殺戮することは間違い云々)が前景化してしいる点や、感染しても発症しない人物の発見とワクチン開発といった要素が共通点としてあげられます。
 簡単なことです。ロメロのゾンビ映画は、上記の稚拙なマキャベリズム批判が前景化しないような予防線がいくつも張ってあり、そのうえで、圧倒的な内省・自己批判があるということ。この映画を見るなら『サバイバル・オブ・ザ・デッド』『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』を見るべきです。

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というか、わざわざこのようなことをいう必要ってないのでしょうね。ゾンビ映画とウィルスパニック映画は違うということですね。
そのうえで見れば、十分『28週後』も楽しめると思います。