『インビクタス』
プロフィールにも書いたような理由で、このブログをはじめようと思います。
まず『インビクタス』から。今回は最近の映画です。名作『グラン・トリノ』ほどではないですが、やはりイーストウッド健在の佳作だと思いました。
マンデラさんにせよキング牧師にせよ、人種的マイノリティの指導者は、一定の政治的成功を収めた後、「同胞」からは日和ったとみなされかねないような、マジョリティ懐柔的な方向へと舵を切っていったと言えると思います。ある意味当然の政治的選択じゃないかと私は考えますが。
映画の中には、マンデラさんが、そのような「舵取り」について『「政治的打算」ではなく「人間的打算」に基づくもの』だと語るシーンがありました。私はこの人間的打算って要するに、恋愛の際の駆け引きのようなものではないだろうかと考えます。もしくは、当時マンデラさんは家族と不仲の「ダメオヤジ」だったということを考え合わせれば、「妻や娘とどうすれば和解できるか?」ということと同じレベルで「白人とどうすればうまくやっていけるだろうか?」と考える、そんなスタンスのことではないかとも思えました。白人に対して、その集団的な力を詐取してやろうとたくらむのではなく、純粋に「仲良くしたいんだよ」という媚態があるというか、ボート(票)として白人を見ているのではなくて、きちんとその顔を見ている、というか。
イーストウッドもそんな含意を込めてこの映画を作ってはいないか? なんたってテーマは大文字の政治ではなく、それに先行する人種間の感情的な問題なのですから。そして、そのために「政治=ラグビー」にマンデラは賭けてみたんだと思います。また、決勝戦の相手はNZ=マオリ族なわけですし(戦いの踊りの素晴らしさ!いやはやこれが史実なのだから凄い!)。その「人間的打算」の政治家の「赦し」の烈しさに思いを馳せつつ、国事の合間に勝ち進んでいくナショナルチームの快進撃に狂喜するマンデラの微笑ましさを観ていると、なんて偉大な人なんだろう!と思わずにいられないのでした。「白人を恐怖させてはいけないし、我々も恐れることはない」というキング=マンデラのテーゼはどこまでも烈しい。
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